家庭用NASとは?
在宅ワークでノートPCのSSDが壊れたとき、何を失うかを想像したことがあるでしょうか。作りかけの資料、契約書のPDF、撮影した写真。クラウドストレージに入れているつもりでも、同期対象から外れたフォルダは意外と多いものです。
NAS(Network Attached Storage)は、家庭内のネットワークにつながる小型のファイルサーバーです。外付けHDDと違い、PCにケーブルでつながっていなくてもアクセスできるため、家族の複数台のPC・スマートフォンから同じ場所へ保存できます。夜間に自動でPCのバックアップを取る、といった運用にも向きます。
ただし、最初に一つ強調しておきたいことがあります。NASの RAID はバックアップではありません。RAID 1(ミラーリング)は片方のHDDが物理的に壊れたときに動き続けるための仕組みで、誤って削除したファイル、ランサムウェアで暗号化されたファイル、NAS本体の故障や落雷、盗難には無力です。両方のディスクに同じ操作が同時に反映されるからです。NASを導入したうえで、さらに外付けHDDかクラウドへ二重に逃がして初めてバックアップになります。
メリット・デメリット
メリット
- 家族の複数端末から同じ保存先を共有でき、「どのPCに最新版があるか分からない」状態を解消できる
- PCのバックアップをスケジュール実行でき、人が意識しなくても世代が溜まる
- 外出先からのアクセスや、写真の自動取り込みといったアプリが標準で用意されている機種が多い
- 容量が足りなくなったら、HDDを大容量のものへ交換して増やせる(機種による)
デメリット
- 24時間通電が前提になるため、電気代とファン・HDDの動作音が常時発生する
- 初期費用は本体だけでなくHDD代が別途かかる。2ベイなら2台ぶんで、本体と同等かそれ以上になることもある
- RAIDをバックアップと誤解すると、かえって危険な運用になる(前述)
- 初期設定でネットワークの知識をある程度要求される。ルーターの設定に触る場面もある
おすすめ製品の比較
| 製品名 | 特徴 | こんな人向け |
|---|---|---|
| Synology DiskStation DS224+ | 2ベイ、Intel系CPU、DSMの完成度が高い | 初めてNASを導入する人 |
| Synology DiskStation DS923+ | 4ベイ、AMD Ryzen搭載、ECCメモリ・拡張性重視 | 長く使う前提で余裕を持ちたい人 |
| QNAP TS-233 | 2ベイのエントリー機、ARM系CPUで省電力 | 費用を抑えて試したい人 |
| BUFFALO LinkStation LS220D | HDD同梱、国内メーカーの日本語サポート | 設定を最小限にしたい人 |
1. Synology DiskStation DS224+
家庭用NASの定番として名前が挙がる2ベイモデルです。Intel系のクアッドコアCPUを搭載し、写真管理・バックアップ・簡易的なファイル共有といった一般的な用途では速度に不満が出にくい構成になっています。
Synology の強みは本体ではなく DSM(DiskStation Manager) というOSにあります。ブラウザで開くとデスクトップのような画面が出て、バックアップ(Hyper Backup)、写真管理(Synology Photos)、PCの丸ごとバックアップ(Active Backup for Business)などをアプリとして追加できます。「NASを買ったが使い方が分からない」で止まりにくいのは、この画面の完成度によるところが大きいです。
デメリットは、同等スペックのQNAP機と比べると価格が高めになりやすい点です。また、Synology は近年の一部モデルで使用できるドライブの互換リストを絞る方針を取っており、購入時にはその型番がどのドライブに対応しているかを必ず確認する必要があります。DS224+ は比較的古い世代のため制限が緩いとされていますが、最新の互換リストはメーカー公式で確認してください。
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2. Synology DiskStation DS923+
同じ Synology の4ベイモデルで、AMD Ryzen 系のCPUを搭載します。DS224+ との実質的な違いは、ベイ数(2→4)、メモリの拡張余地、そして M.2 NVMe スロットや拡張ユニットへの対応といった先々の伸びしろです。
家庭用として4ベイが必要になる場面は限られますが、「2ベイを埋めてから容量が足りなくなり、HDDを全部買い直す」という回り道を避けたいなら選ぶ価値があります。RAIDの構成を後から変えられる余地も広がります。
デメリットは価格と設置スペースです。4ベイぶんの筐体は2ベイ機より明確に大きく、HDDを4台入れれば動作音も相応になります。写真とPCバックアップだけが目的なら、明らかに過剰です。
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3. QNAP TS-233
QNAP のエントリー向け2ベイモデルです。ARM系のCPUを採用しており、Intel系の機種と比べて消費電力が抑えられます。24時間通電させる機器なので、この差は年単位で効いてきます。
QNAP の QTS も多機能で、アプリの選択肢は Synology に劣りません。むしろ細かく設定したい人にとっては自由度が高く、同価格帯では選択肢として有力です。
デメリットは、ARM系CPUのため一部のアプリ(仮想化やDocker系の重い処理)が動かない、あるいは実用的な速度が出ないことがある点です。「NASを買ったついでにサーバー的なことをしたい」という発想があるなら、この機種は向きません。純粋にファイル置き場として使う前提で選んでください。
4. BUFFALO LinkStation LS220D
国内メーカーの2ベイNASで、この4機種のなかで唯一 HDDが同梱された状態で販売されています。「本体を買ったのにHDDを別に買う必要があると後から知った」という初心者のつまずきが構造的に起きません。設定画面も日本語で、電話サポートを受けられる点は Synology・QNAP に対する明確な優位です。
デメリットは、アプリによる機能拡張の幅が Synology・QNAP に比べて狭いことです。ファイル共有と簡易バックアップに用途を絞るなら十分ですが、写真の顔認識や仮想マシンといった発展的な使い方は期待できません。また、同梱HDDの容量は後から自由に増やしにくい構成です。
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選び方のポイント
1. HDD代を含めた総額で比べる — 本体価格だけを見て選ぶと、2ベイぶんのHDDを追加した時点で予算を超えます。HDD同梱機(LS220D)との比較は、必ず総額で行ってください。
2. RAIDとバックアップを分けて考える — RAID 1 は「HDDが1台壊れても止まらない」ための仕組みです。誤削除・ランサムウェア・本体故障に備えるには、NASの中身をさらに外へ逃がす経路が要ります。
3. CPUの系統で用途の上限が決まる — ARM系(TS-233)は省電力ですが、重いアプリは動きません。Intel/AMD系(DS224+ / DS923+)は消費電力と引き換えに用途が広がります。
4. ドライブの互換リストを購入前に確認する — 近年はメーカーが対応ドライブを絞る例があります。手持ちのHDDを流用するつもりなら、この確認を飛ばさないでください。
読者タイプ別にまとめると、初めてなら DS224+、長く使う前提なら DS923+、費用と電力を抑えたいなら TS-233、設定を最小限にしたいなら LS220D が第一候補です。
まとめ
NASは「壊れる前に入れておく」種類の機材です。データを失ってから検討を始めると、その時点で失ったものは戻りません。まずは2ベイのエントリー機で、PCの自動バックアップだけでも動かし始めるのが現実的な一歩になります。
そのうえで繰り返しますが、NASを置いただけでは守れていません。NAS本体とは別の場所(外付けHDDまたはクラウド)にもう1本逃がして、初めてバックアップと呼べます。
価格・仕様は販売時期やモデルチェンジで変動します。本記事では金額を断定していませんので、購入前に現在の販売ページとメーカー公式の仕様表を確認してください。持ち出し用のバックアップ先については外付けSSDによるバックアップ、机まわりのネットワーク機器についてはスイッチングハブの選び方もあわせてご覧ください。