デスクの音声だけをワイヤレスにするという選択

在宅ワークのデスクでケーブルが一番絡むのは、たいていヘッドホンのケーブルです。席を立つたびに引っかかり、椅子のキャスターに巻き込みます。とはいえワイヤレスヘッドホンに買い替えると、いま使っている有線ヘッドホンの音質を捨てることになります。

Bluetoothトランスミッターは、PCやゲーム機の側にだけ小さな送信機を挿し、受信側は好きなワイヤレスイヤホンやヘッドホンにするという機材です。あるいは据置型のモデルなら、テレビやオーディオ機器の光デジタル出力を丸ごとワイヤレス化できます。ここでは方式の違う実在モデルを3つ取り上げ、それぞれが解決する問題と、避けられない制約を整理します。

メリット・デメリット

メリット

  • PCやゲーム機の側にドングルを挿すだけで、OSのBluetooth設定を経由せずに接続できる。会社支給PCでBluetoothが無効化されていても使える場合がある

  • 受信側の機器を自由に選べる。手持ちのワイヤレスイヤホンをそのまま流用できる

  • 据置型なら、テレビやアンプの光デジタル出力を2台のヘッドホンへ同時に送れるモデルがある

  • ケーブルが物理的に無くなるため、席を立つ動作でヘッドホンを引き倒す事故が起きない

デメリット

  • 低遅延は「送信側と受信側の両方が同じコーデックに対応していること」が条件になる。片方でも非対応なら遅延は大きくなる

  • マイクを使う通話モードにすると、高音質コーデックが使えなくなる仕様のモデルがある

  • Bluetoothである以上、有線に対して原理的に遅延はゼロにならない。音ゲーのようにフレーム単位の同期が要る用途には向かない

  • 送信機自体の電源をUSBから取るモデルでは、USBポートを1つ占有する

おすすめ製品の比較

製品名特徴こんな人向け
Creative BT-W5USB-C接続の超小型ドングル、aptX Adaptive対応PCやゲーム機のUSB端子に挿して手持ちのイヤホンを使いたい人
Avantree Oasis Plus光デジタル/AUX入力の据置型、2台同時送信テレビの音を家族2人ぶんワイヤレス化したい人
Avantree Oasis Plus 2音量リモコン、aptX Adaptive、サウンドバー併用テレビとサウンドバーを併用しながら切り替えたい人

1. Creative BT-W5

USB-C接続の送信ドングルです。重量はわずか3gで、大きさは硬貨程度という極小サイズです。Bluetooth 5.3に対応し、コーデックはaptX Adaptiveを使えます。aptX Adaptiveで送信した場合、24bit・最大96kHzのハイレゾ相当の伝送に対応します。

このモデルの特徴は、aptX Adaptiveの動作を「音質優先」と「低遅延優先」で切り替えられる点です。前者は動的にビットレートを上げ、後者は動的に遅延を詰めます。映画を観るときは音質優先、ゲームのときは低遅延優先と使い分けられるということです。電源はUSB-Cから供給され、消費電力はごくわずかです。デバイス切り替え機能も備えており、PCとゲーム機の間で接続先を切り替えられます。

重要なデメリットを1つ挙げておきます。HFPモード(マイクを使う通話モード)にすると、aptX Adaptive、aptX、SBCといったA2DPの高音質コーデックが使えなくなります。 Web会議で自分の声も送りたい場合、音質は通話品質まで落ちるということです。音楽やゲーム音声の再生専用と割り切るか、マイクは別途デスクマイクを用意するのが現実的な運用になります。

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2. Avantree Oasis Plus

USBドングル型ではなく、光デジタル(TOSLINK)とAUX(3.5mm)入力を持つ据置型のトランスミッター兼レシーバーです。テレビやアンプの音声出力を丸ごとワイヤレス化する用途に向きます。

aptX Low Latency認証を取得しており、低遅延(40ms未満)で伝送できます。ただしこれは条件付きです。受信側のヘッドホンやスピーカーもaptX Low Latencyに対応していなければ、遅延は70msから220ms程度になります。 送信機だけを低遅延対応にしても意味がない、という点はカタログを読むときに見落としやすいところです。手持ちのイヤホンがaptX Low Latency対応かどうかを先に確認してください。

Bluetoothはバージョン5.0でClass 1に対応し、見通しの良い屋外で最大約50m、屋内では15mから21m程度の到達距離とされています。2台のヘッドホンやスピーカーへ同時に送信できるため、テレビの音を2人で聴く用途に使えます。デメリットは、USBドングル型と違って本体の設置場所と電源が必要になることです。デスクの上に置く機材が1つ増えます。

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3. Avantree Oasis Plus 2

Oasis Plusの後継にあたるテレビ向けトランスミッターです。コーデックがaptX Adaptiveに更新されており、前世代のaptX Low Latencyから世代が進んでいます。入力は光デジタルとAUXに対応し、2台のヘッドホンへの同時送信も引き継いでいます。

前世代からの実用的な差分は2つあります。1つはリモコンによる音量調整に対応したこと。テレビの音量とヘッドホンの音量を、手元で独立して変えられます。もう1つはサウンドバーのパススルーに対応していることで、サウンドバーを繋いだまま、必要なときだけヘッドホンへ切り替えるという使い方ができます。家族が寝ている時間帯だけヘッドホンに切り替える、といった運用が配線を変えずに済むということです。

デメリットは据置型に共通するもので、設置スペースと電源が要ることに加え、テレビ側に光デジタル出力があることが前提になる点です。最近の薄型テレビでは光デジタル出力を省いてHDMI eARCだけにしている機種もあるため、購入前に自分のテレビの背面端子を確認してください。

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選び方のポイント

遅延を気にするなら、送信側と受信側のコーデックを両方確認する。 これが最も重要です。トランスミッター側がaptX Low LatencyやaptX Adaptiveに対応していても、受信するイヤホンが対応していなければSBCにフォールバックし、遅延は数百ミリ秒の領域になります。買うのは「対応する送信機」ではなく「対応する組み合わせ」だと考えてください。

マイクを使うかどうかで選択肢が変わる。 前述のとおり、通話モードでは高音質コーデックが無効になる仕様が一般的です。Web会議が主目的なら、トランスミッターではなく最初からUSB接続のヘッドセットを選ぶほうが素直です。

USB接続型か据置型かは、音を出す機器で決まる。 PCやゲーム機ならUSBドングル型、テレビやアンプなら光デジタル入力を持つ据置型になります。

読者タイプ別にまとめると、PCまわりを最小限の追加機材でワイヤレス化したい人はBT-W5、テレビの音を複数人で聴きたい人はOasis Plus、サウンドバーと併用しつつ手元で音量を変えたい人はOasis Plus 2が向きます。

まとめ

Bluetoothトランスミッターは「有線ヘッドホンを無線化する」というより、「音源側だけを無線化して受信側は自由に選べるようにする」機材です。既存のイヤホンやヘッドホンを活かせるのが利点である一方、低遅延は組み合わせ次第、通話は音質が落ちるという制約がはっきりしています。制約を理解したうえで使えば、デスクからケーブルを1本確実に減らせます。

価格は販売時期やモデルチェンジで変動します。本記事では金額を断定していませんので、購入前に現在の販売ページとメーカー公式の仕様表を確認してください。デスクまわりの音声環境についてはUSBスピーカーフォンノイズキャンセリングヘッドホンの記事もあわせてご覧ください。