キーボードを小さくしたい理由は、たいてい「机が狭いから」ではありません。マウスが遠いからです。フルサイズのキーボードはテンキーのぶんだけ右へ伸びるので、その右にマウスを置くと、腕を大きく開いた姿勢で1日を過ごすことになります。肩の付け根が張るのはここが原因のことが多い。
ロジクール MX Keys Mini(KX700シリーズ)は、その右側を丸ごと落としたキーボードです。ただし落としたぶんの代償があり、しかも代償はテンキーだけではありません。買ってから気づきやすい制約が2つあるので、先にそこから書きます。
MX Keys Mini で何が変わるのか
幅296mm・奥行132mmで、マウスが手前に寄る
ロジクールが公表している寸法は 幅296mm、奥行132mm、高さ21mm です。一般的なフルサイズキーボードは幅430mm前後あるので、130mm以上短いことになります。
この130mmが、そのままマウスの位置に効きます。キーボードの右端が130mm左へ寄れば、マウスも同じだけ体の正面に近づけられる。肩を開かずに操作できる姿勢が作れるのが、このキーボードの実利です。「机が広くなる」ことより、こちらのほうが日常的に効きます。
バックライトONで10日、OFFで5か月
バッテリー駆動時間の公表値は、バックライトON時に最長10日間、OFF時に最長5か月です。差は15倍あります。
つまり、この製品はバックライトを使うかどうかで別物になります。毎日光らせるなら10日ごとの充電が前提で、これは「充電を意識しないで済むキーボード」ではありません。逆にバックライトを切れば、5か月に1回まで減ります。暗い部屋で作業しないなら、切って運用するのが現実的です。
充電は USB-Cポートです(付属ケーブルはUSB-A - USB-C)。
接続はLogi Bolt USBレシーバーとBluetooth Low Energy
無線方式は Logi Bolt USBレシーバーと Bluetooth Low Energy の2通り、無線範囲は10mです。対応OSは Windows 10以降、macOS 10.15以降、Chrome OS、iPadOS 14以降、iOS 14以降、Android 8.0以降、そして Linux が挙げられています。
対応の幅が広いのは、3台までのデバイスをキーひとつで切り替えて使う前提の製品だからです。仕事用のPCと私物のiPadを1枚のキーボードで行き来する、という使い方が想定されています。
購入前に知っておきたいデメリット
Unifyingレシーバーでは接続できない
この製品でいちばん見落とされる制約です。 MX Keys Mini は Logi Bolt 対応で、Unifying には対応しません(Amazon.co.jp の国内正規品の商品名にも「Logi Bolt Unifying非対応」と明記されています)。
ロジクールのサポートは、Logi Bolt 製品を Unifying レシーバーとペアリングすることはできず、その逆もできないと案内しています。Logi Bolt は Bluetooth Low Energy をベースにした規格で、Unifying はロジクール独自の2.4GHz方式なので、そもそも別物です。
何が起きるかというと、すでに手元にあるロジクールのUnifyingレシーバーは使い回せません。「マウスと同じレシーバー1本でまとめたい」という買い方をしていた人ほど、ここで詰まります。手持ちのマウスがUnifying世代なら、レシーバーは2本挿すか、キーボード側をBluetoothで接続するかのどちらかになります。
Bluetooth接続にすればレシーバーは不要ですが、今度はBIOS画面やOS起動前の操作でキーボードが効かないという別の制約が出ます。ここを気にする人はレシーバー運用を選ぶことになります。
テンキーが無いので数字入力は上段のみ
当たり前ですが、書いておきます。テンキーレスなので数値を大量に入力する作業には向きません。表計算で金額を打ち込む、経理処理をする、といった用途では、上段の数字キーだけで戦うことになります。
回避策は外付けのテンキーを別途置くことですが、それをやると結局フルサイズと同じ横幅を消費するので、この製品を選んだ意味が薄れます。数字入力が業務の中心なら、素直にテンキー付きを選んだほうがよいでしょう。
打鍵感は薄型メンブレンで、メカニカルの代わりにはならない
MX Keys Mini はキーストロークが浅い薄型キーボードです。押し込む感触や打鍵音を重視する人が、メカニカルキーボードから乗り換えると物足りなく感じます。静かで疲れにくい方向に振った設計なので、「軽く速く打てること」を評価する人向けです。
おすすめ製品の比較
| 製品名 | 特徴 | こんな人向け |
|---|---|---|
| ロジクール MX KEYS mini KX700GR | 幅296mmのテンキーレス。Logi Bolt / Bluetooth、3台切替 | マウスを体の正面に寄せたい人。数字入力が少ない人 |
| ロジクール MX KEYS S | テンキー付きのフルサイズ。バックライトON10日/OFF5か月は同等 | 表計算や経理で数字を大量に打つ人 |
| Logi Bolt レシーバー | Logi Bolt 対応機器を無線接続するUSB-Aレシーバー | 本体のBluetoothを使わず、BIOS段階から効かせたい人 |
1. ロジクール MX KEYS mini KX700GR
日本語配列の国内正規品で、カラーはグラファイト(KX700GR)とペイルグレー(KX700PG)があります。Amazon.co.jp 限定モデル(KX700GRd)も並んでいて、同じMX Keys Miniでも型番が枝分かれしている点は購入時に紛らわしいところです。中身の仕様は共通で、違いは色と販売経路です。
向いているのは、ノートPCとデスクを行き来する人です。3台までの切り替えに対応するので、会社PC・私物PC・タブレットを1枚で兼ねられます。逆に、1台のデスクトップにつなぎっぱなしで数字も打つ、という使い方なら利点が出ません。
ロジクール MX KEYS mini KX700GRをAmazonで確認する
2. ロジクール MX KEYS S
テンキー付きのフルサイズ版です。バッテリーの公表値はバックライトON時10日・OFF時5か月でMX Keys Miniと同等なので、両者の違いは主に横幅とテンキーの有無だと考えてよい。手が近づくとバックライトが点灯する機能も共通です。
こちらはMX Keys Miniより明確に重く、机に据え置く前提の製品です。持ち運ぶ気がないなら、テンキーがあるぶん素直に便利です。
3. Logi Bolt レシーバー
上で書いたとおり、Unifyingレシーバーの代わりにはなりません。逆も同じです。Logi Bolt は全経路が暗号化され、FIPS準拠、LE Secure Connection を強制し、ECDH P-256 と AES-128-CCM を使うと説明されています。セキュリティ要件のある職場でUnifyingが使えない、という事情がある人にはこちらしか選択肢がありません。
紛失や故障で単体購入する場合は、手持ちの機器がBolt対応かUnifying対応かを先に確認してください。ここを間違えると、届いても接続できません。
選び方のポイント
- 初めてテンキーレスにする人: まず外付けテンキーを買い足さずに1か月使ってみてください。数字入力が想像より少なければ、そのまま定着します。多ければフルサイズに戻したほうが速い。
- コスパ重視: バックライトを切って運用する前提なら、充電の手間は5か月に1回まで下がります。光らせない使い方でよいなら、この製品の弱点はほぼ消えます。
- 高機能重視: 3台切替とマルチOS対応が要るなら選ぶ価値があります。ただしレシーバー1本で既存のUnifyingマウスとまとめる運用はできません。
まとめ
MX Keys Mini の利点は、幅296mmという横幅そのものではなく、それによってマウスが体の正面に寄ることです。肩の負担を減らす目的なら、テンキーを捨てる価値はあります。
一方で、注意点は2つです。Unifyingレシーバーが使い回せないことと、バックライトを使うと駆動時間が10日まで落ちること。どちらも仕様どおりの挙動で、あとから設定で変えられるのはバックライトだけです。
なお価格は変動します。同じMX Keys Miniでも色や販売経路で複数の型番が並んでいるため、購入前にAmazonの商品ページで型番・配列(日本語配列かどうか)・価格を確認してください。