「有線なのに不安定」の切り分けに、一番時間がかかる

在宅勤務で有線LANが不調になったとき、疑う先は多い。ルーター、ハブ、ONU、PC側のNIC、ドライバ、そしてケーブル。このうちケーブルだけが、交換してみるまで正常かどうか分からないという厄介な性質を持っている。

見た目では分からないからだ。被覆が無傷でも、中の芯線は折れている。机の脚で踏んでいた箇所、椅子のキャスターが通る箇所、ドアの隙間を通している箇所で、8本のうち1本か2本だけが切れる。この状態のケーブルは「まったく繋がらない」のではなく、繋がるが遅い、あるいは時々切れるという一番診断しにくい症状を出す。

1000BASE-T(ギガビット)は8芯すべてを使う。1本でも死ねば、規格上はリンクが下がる。100BASE-TXは4芯しか使わないので、残った芯だけで100Mbpsとしてリンクしてしまうことがある。ギガのはずの回線が100Mbpsで頭打ちになっている、という現象の正体はこれであることが多い。

LANケーブルテスターは、この切り分けを数分で終わらせるための道具である。ケーブルの両端に親機と子機を挿し、8本の芯が1番から8番まで順に導通するかをLEDで見る。どの芯が切れているかまで分かる。

メリット・デメリット

メリット

  • ケーブルが原因かどうかを、機器を触らずに確定できる。切り分けの起点が一つ減る

  • 断線している芯の番号が分かる。8本中どこかが分かれば、自作ケーブルなら作り直す判断も付く

  • 結線ミス(ストレート/クロスの取り違え、圧着時の順番違い)を検出できる。自分でコネクタを圧着する人には必須に近い

  • 壁の中を通してある既設ケーブルでも、子機を外して向こう側に置けば測れる製品がある

  • 電池式で数千円から手に入る。ケーブルを何本も買い替えて総当たりするより安く済む

デメリット

  • 測れるのは導通と結線であって、通信品質ではない。ノイズの乗りやすさ、クロストーク、実効速度は分からない

  • 「規格上何ギガ出るケーブルか」の判定はできない。CAT6かCAT5eかはテスターでは分からず、被覆の印字を読むしかない

  • ペア単位の断線(2本1組の両方が同時に切れている状態)を検出できない機種がある

  • 両端にアクセスできる必要がある。長い配管の中を通っているケーブルは、子機を分離できるタイプでないと測れない

  • 使う頻度が低い。年に数回しか出番が無い道具ではある

おすすめ製品の比較

注意: 以下は2026年9月18日にサンワサプライの公式製品ページで確認した仕様である。価格は変動するため、購入前に商品ページで最新の情報を確認してほしい。

製品名標準価格(税込)対応コネクタ最大測定長PoE測定
LAN-TST73,300円RJ-45 / RJ-11305m非対応
LAN-TST3Z5,280円RJ-45(UTP/STP)/ RJ-11300m非対応
LAN-TST531,460円RJ-45(UTP/STP)/ RJ-11 / RG-58(BNC)305m対応(IEEE 802.3af/at)

1. サンワサプライ LAN-TST7

3機種のうち最も安く、標準価格は3,300円(税込)である。親機・子機が分離するタイプで、導通・断線・結線ミス・接地の確認ができる。LEDで1から8の結線状態を見る方式だ。最大測定長は305mで、CAT5eからCAT8までのUTP/STPケーブルに対応する。

この機種の特徴は小ささと軽さにある。親機が62(W)×96(D)×24(H)mm、子機が37.5(W)×96(D)×24(H)mmで、合計約69g(親機約42g・子機約26g)。電源は単四乾電池2本で、テスト用の電池が同梱される。9V角形電池を使う他の2機種と違い、コンビニでも手に入る単四で動くのは、たまにしか使わない道具としては利点である。

LEDの走査速度をFAST/SLOWで切り替えられるので、ゆっくり目で追いたいときに合わせられる。

在宅の自宅LANを診るという用途なら、この機種で機能は足りる。 3,300円という価格は、LANケーブルを2〜3本買い替えて総当たりするのと同程度だ。

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2. サンワサプライ LAN-TST3Z

標準価格5,280円(税込)で、RJ-45(UTP/STP)とRJ-11に対応する。導通・断線に加え、どの芯線が断線しているかを特定でき、1〜8のLEDの点灯状態を見ながら結線を判別する。最大測定長は300mである。

親機はW66×D29.5×H105.5mm・72g、子機はW37×D28×H105.5mm・約48g。電源は9V乾電池1本だ。LAN-TST7より一回り大きく重い。

子機が取り外せる設計が、この機種の実用上の要点になる。壁に埋め込まれた情報コンセントの向こう側や、床下・天井裏を通してある既設ケーブルは、両端が離れた場所にある。子機だけを反対側に置いて戻ってくれば測れる、という使い方ができる。

LAN-TST7との差額は約2,000円。その差で何が買えるかというと、筐体の大きさと重さ、そして9V電池の入手性を犠牲にして、断線芯線の特定という機能を得る形になる。ただしLAN-TST7も結線状態をLEDで見せるので、実務上の差は思ったほど大きくない。既設配線を測る機会があるか、で判断すればよい。

なお、PoE(Power over Ethernet)の測定機能は無い。

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3. サンワサプライ LAN-TST5

標準価格31,460円(税込・税抜28,600円)で、前の2機種とは価格帯が一桁違う。PoE対応のLANケーブルテスターである。

対応コネクタはRJ-45(UTP/STP)、RJ-11、そしてRG-58(BNCケーブル)。PoEについてはIEEE 802.3af/atに準拠し、電圧クラスA/B(12〜36Vおよび45〜78Vの範囲)を識別する。ただしこのPoE判定機能は親機側のみで、子機には無い。最大測定長は305m、導通・断線・結線ミス(ストレート/クロス判別)を測れる。電源は9V乾電池1本、親機がW68×D26×H105mm・約115g、子機がW31×D25×H102mm・約48gである。

PoEを使っていないなら、この機種を選ぶ理由は無い。 在宅ワークの範囲でPoEが出てくるのは、ネットワークカメラやPoE給電のアクセスポイントを自分で設置しているケースくらいだ。その場合は「給電されているか」「何ボルトのクラスで来ているか」を測れることに3万円の価値が出る。

公式仕様で明記されている制約として、ペア単位の断線を検出する機能は無い。2本1組の両方が同時に切れている場合は、この機種でも分からない。価格が高いから何でも測れる、ということではないので注意してほしい。

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買う前に、まず無料でできる切り分け

テスターを買う前に確かめておくと無駄が減ることがある。リンク速度を見ることだ。

WindowsならPowerShellで `Get-NetAdapter` を実行するとLinkSpeedが出る。macOSならシステム情報のネットワーク項目、Linuxなら `ethtool <インターフェース名>` で見られる。ここが1 Gbpsではなく100 Mbpsになっていたら、ケーブルか、その両端のポートのどちらかが8芯を使えていないという強い手掛かりになる。

そのうえで別のケーブルに差し替えて1 Gbpsに戻れば、原因はケーブルで確定する。テスターが要るのは、それが「どの芯か」まで知りたいとき、あるいは差し替えるための予備ケーブルが無いとき、そして壁の中の既設ケーブルを疑うときだ。

逆に、リンクは1 Gbpsで張れているのに速度が出ない・切れる、という症状ならケーブルの導通は正常である可能性が高い。その場合、テスターを買っても答えは出ない。 ルーター、無線との干渉、上位回線、機器の発熱などを疑う場面になる。

選び方のポイント

1. リンク速度を先に見る。100 Mbpsに落ちているならケーブル側の疑いが濃く、1 Gbpsで張れているならテスターでは原因が出ない
2. 既設配線を測るかどうかで決める。両端が手元にある取り回しケーブルだけなら親機・子機一体でも足りるが、壁や床下を通っているなら子機が分離するタイプが要る
3. PoEを使っていないならPoE対応機は不要。LAN-TST5とLAN-TST7の価格差は約28,000円で、その差はPoE測定とBNC対応のためのものである
4. 電池の種類を見ておく。9V角形は買い置きが無いことが多い。年に数回しか使わない道具なら、単四で動くほうが結局使える
5. 測れないものを理解しておく。カテゴリ判定、実効速度、ノイズ耐性、ペア単位の断線は、いずれもこの種のテスターでは分からない

読者タイプ別には、自宅の有線LANを一度きちんと確かめたいだけならLAN-TST7で足りる。自分でコネクタを圧着する人、あるいは既設配線を触る人はLAN-TST3Zの子機分離と断線芯線特定が効く。PoE機器を設置しているならLAN-TST5が候補に入るが、それ以外の人が3万円を出す理由は無い。

まとめ

LANケーブルテスターは、ケーブルが原因かどうかを確定させるための道具である。導通と結線は測れるが、通信品質やカテゴリは測れない。この線引きを外すと期待が外れる。

サンワサプライの3機種は、2026年9月18日時点の公式仕様で、LAN-TST7が3,300円(単四乾電池2本・親機62×96×24mm・合計約69g・最大305m)、LAN-TST3Zが5,280円(9V乾電池1本・断線芯線の特定可・子機分離・最大300m)、LAN-TST5が31,460円(PoE IEEE 802.3af/at対応・RG-58対応・最大305m・ペア断線の検出は非対応)である。いずれも税込の標準価格で、実売価格は変動する。

買う前にリンク速度を確認するだけで、テスターが要るかどうかが半分決まる。100 Mbpsに落ちていたらケーブルを疑い、1 Gbpsで張れていたら別の場所を疑う。 そこから先の「どの芯か」を知りたくなったときが、この道具の出番である。価格は変動するため、金額はAmazonの商品ページで最新のものを確認してほしい。