ルーターをWi-Fi 7にしたのに速くならない

Wi-Fi 7対応ルーターに買い替えたのに、オンライン会議の途切れ方が前と変わらない。速度測定の数字も似たようなもの。こういうときに効いていないのが MLO(Multi-Link Operation) です。

Wi-Fi 7(IEEE 802.11be)の目玉はいくつかありますが、Wi-Fi Allianceが挙げている主な機能は次のとおりです。

  • 2.4GHz / 5GHz / 6GHz の3帯域で動作する

  • 6GHz帯で 320MHz幅のチャネルが使える(Wi-Fi 6の2倍の帯域幅)

  • 4K QAM に対応し、Wi-Fi 6の1024 QAMから伝送レートが20%向上する

  • Multi-Link Operation により、複数リンクへの負荷分散でスループットと信頼性が上がる

  • 512 Compressed Block Ack でオーバーヘッドを削減

  • 1台の端末に複数のRU(リソースユニット)を割り当てられる

このうち MLO だけが、端末側の対応がないと存在しないのと同じになる機能です。

MLO が何をしているか

従来のWi-Fiでは、端末は「5GHzにつなぐ」「6GHzにつなぐ」のどちらか一方を選びます。電波が悪くなると別の帯域に切り替えますが、切り替えの瞬間は接続が一度切れます。

MLO では、端末とアクセスポイントが複数の帯域を1つの接続としてまとめて扱います。片方の帯域が混んでいれば空いているほうへ荷物を流し、片方が悪化しても接続そのものは切れません。会議中に一瞬だけ音が飛ぶ、という現象はこの切り替えで起きることがあるので、そこに効きます。

STR と eMLSR の違い(ここが製品差になる)

MLOには実装の段階があり、名前が似ているのに中身がかなり違います。

STReMLSR
正式名Simultaneous Transmit and ReceiveEnhanced Multi-Link Single-Radio
無線機の数リンクごとに独立(複数)1つ
同時送受信できるできない(同時に待ち受けるだけ)
帯域の合算期待できる期待できない
主な効果スループット向上・低遅延遅延とつながりやすさの改善

eMLSR は、複数の帯域を同時に「聞いて」いますが、実際にデータをやりとりするのは一度に1リンクだけです。空いているほうを即座に選べるので遅延やつながりやすさは良くなりますが、「2つの帯域の速度が足し算になる」わけではありません。

スマートフォンや薄型ノートPCの内蔵Wi-Fiは、消費電力と実装面積の都合で eMLSR 止まりのことがあります。「MLO対応」と書いてあっても、速度が倍になると期待すると外れます。

効く条件は3つそろったとき

1. ルーターが MLO に対応している
2. 端末(PC・スマホ)側の無線チップとドライバが MLO に対応している
3. MLO が有効になる設定になっている

3つ目が見落としやすい点です。MLO を使うには、束ねたい帯域が同じSSID・同じ認証方式でまとまっている必要があります。2.4GHz・5GHz・6GHzをそれぞれ別のSSIDに分けて運用していると、MLO の対象になりません。「バンドステアリング」「SSIDの統合」といった項目をオンにしてまとめます。

また 6GHz 帯を含める場合、暗号化は WPA3 が必要です。互換性のために WPA2/WPA3 混在にしていると、6GHz のリンクが立たない構成になることがあります。

メリット・デメリット

メリット

  • 切り替え時の瞬断が減る: 帯域をまたぐローミングで接続が切れない

  • 混雑に強い: 片方の帯域が混んでも、もう片方へ流せる

  • 遅延のばらつきが小さくなる: 会議・リモートデスクトップのような用途で効きやすい

  • STR 実装なら帯域の合算も効く

デメリット

  • 端末側の対応が必須: ルーターだけ替えても何も起きない

  • eMLSR では速度は足し算にならない: 「MLO対応」の表記だけでは判断できない

  • SSIDを分ける運用と両立しない: 帯域ごとに別SSIDにしている環境では設定変更が要る

  • 6GHzを使うならWPA3が前提: 古い機器との混在環境では設計が要る

  • 消費電力が増えることがある: 複数リンクを維持するため、バッテリー駆動の端末では不利に働く場合がある

買う前に見る3点

1. 手持ちの端末が Wi-Fi 7 かを先に調べる: MLO はルーター単独では機能しません。買い替え予定のPC・スマホがなければ、効果は将来の投資になります
2. STR か eMLSR かを仕様表で探す: 記載がないことも多いですが、あれば速度の期待値が決まります
3. 6GHz を使う前提なら設置場所を考える: 6GHz は帯域が広いぶん壁に弱く、ルーターから遠い部屋では 5GHz のリンクが主役になります

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価格・仕様は変動します。購入前に商品ページで最新の情報を確認してください。

出典

  • Wi-Fi Alliance「Wi-Fi CERTIFIED 7」公式ページ(対応帯域・320MHz・4K QAM・Multi-Link Operation・512 Compressed Block Ack・複数RU)確認日 2026-09-13

  • IEEE 802.11be の MLO に関する技術解説(STR / eMLSR / NSTR の動作モード)確認日 2026-09-13