USB PDの上限が100Wだった時代は終わっていて、いまは240Wまで規定されています。ただし「240W対応」と書かれたケーブルを買えば何でも解決する、という話ではありません。240W対応であっても映像が出ないケーブルがありますし、データ転送は480Mbpsのままというものもあります。
ここでは、サンワサプライのUSB-IF認証品2型番の公式仕様を並べて、何が違うのかを具体的に見ていきます。
そもそも240Wとは何を指すか
USB PDで240Wを流すというのは、48V/5Aで送るという意味です。従来の100Wは20V/5Aでした。電流は同じ5Aで、電圧が20Vから48Vに上がっているぶんだけワット数が増えています。
ここが重要な点です。240W対応を名乗るには、48Vという高い電圧を扱えるケーブルである必要があるわけで、100W対応の手持ちのケーブルを挿しても240Wにはなりません。ケーブル側がeMarkerというチップで「自分は何Vの何Aまで通せるか」を機器に申告し、機器はその範囲でしか電力を送らない仕組みになっているためです。
つまりケーブルは、電気を通す線であると同時に、自分の能力を名乗る部品でもあります。
実際の仕様を2本並べる
サンワサプライの公式製品ページに載っている仕様です。どちらもUSB-IF認証取得品で、eMarkerチップを内蔵しています。
KU-CCPE10(USB2.0 Type-C PD240W対応ケーブル)
* 標準価格 3,960円(税込)
* 長さ1m
* 規格はUSB2.0/USB1.1、データ転送速度は最大480Mbps
* 最大給電240W(48V/5A)。従来の20V/5A(100W)にも対応
* DisplayPort Alternate Modeには対応していないため、映像出力はできない(公式に明記あり)
* ケーブル外径3.1mm、重量約29g
* 2重シールド構造、金メッキピン、線材規格UL2725、RoHS指令準拠
KU-20GCCPE10(USB20Gbps/USB4 Gen2×2 Type-Cケーブル)
* 標準価格 6,490円(税込)
* 長さ1m
* USB4 Gen2×2対応、データ転送速度20Gbps
* 最大給電240W(48V/5A)。従来の20V/5A(100W)にも対応
* DisplayPort Altモード対応、4K60Hz対応
* ケーブル外径5.0mm、重量約45.1g
* 3重シールド構造、金メッキピン
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この2本の差が意味すること
同じ「240W対応・USB-IF認証」でも、価格は3,960円と6,490円で、1.6倍以上の開きがあります。差額の中身は給電能力ではありません。給電はどちらも240Wで同じです。違うのはデータ転送速度(480Mbps対20Gbps)と、映像が出るかどうかです。
ここから逆算すると、選び方はかなり単純になります。
* 充電にしか使わないなら、安いほうで足りる。ノートPCの電源としてデスクに置きっぱなしにするケーブルに、20Gbpsも4K60Hzも要りません。
* 1本でモニターにも映したいなら、高いほうしか選択肢がない。KU-CCPE10は公式に「映像出力はできません」と書かれています。挿しても映らないので、後から気づくと買い直しになります。
* 外付けSSDを繋ぐなら、480Mbpsでは使い物にならない。USB2.0の480Mbpsは実測で毎秒数十MB程度の世界です。SSDの性能はまったく出ません。
デメリットと注意点
* 240W対応だから速い、ではない。給電と転送は別々に決まります。KU-CCPE10は240Wを通せますが、データはUSB2.0のままです。ここを混同したまま買うと「240Wの高いケーブルなのにSSDが遅い」ということになります。
* 太くなる。240Wかつ20Gbpsを通すKU-20GCCPE10は外径5.0mm・約45.1gで、充電専用のKU-CCPE10(外径3.1mm・約29g)より明確に太く重いです。モニターアームに沿わせたり、狭い隙間を通したりする配線では、この1.9mmの差が効きます。
* 240Wを受けられる機器は限られる。ケーブルが240W対応でも、充電器とノートPCの両方が48Vに対応していなければ240Wにはなりません。手持ちの機器の仕様を先に確認しないと、240W対応ケーブルを買った意味がありません。
* 1mしかない型番がある。ここで挙げた2型番はどちらも1mです。デスクの奥の充電器から手前のノートPCまで届かせるなら、同シリーズの2m品を見る必要があります。
買う前に確認すること
1. 充電器の最大出力を見る。240W出せる充電器を持っていないなら、240W対応ケーブルを買っても上限は充電器側で決まります。
2. ノートPC側の受電上限を見る。多くのノートPCは100W前後までです。240Wが必要になるのは、大型のゲーミングノートや、複数機器へ分配するドックを繋ぐ場合です。
3. 映像を通すかどうかを先に決める。ここが決まれば、KU-CCPE10とKU-20GCCPE10のどちらかは自動的に決まります。
4. 長さを決めてから型番を選ぶ。1mで足りるかを、実際にケーブルの通り道をメジャーで測って確かめます。
5. USB-IF認証の有無を見る。48V/5Aは家庭で扱う直流としては小さくない電力です。認証品を選ぶのは、性能のためというより安全側の判断です。
まとめ
240W対応ケーブルを選ぶときに見るべきなのは、W数ではありません。W数はどちらも240Wで同じだからです。実際に選択を決めるのは、映像を通すかとデータ速度が要るかの2点で、それがそのまま3,960円と6,490円の差になっています。
充電専用と割り切れるなら安いほうで十分ですし、1本でモニターまで賄いたいなら高いほうしかありません。仕様表のW数だけを見て「同じ240Wなら安いほうでいい」と決めると、映らないケーブルを買うことになります。
(本記事の仕様は、2026年9月8日にサンワサプライ公式製品ページで確認した内容です。価格・仕様は変更されることがあります。)