同じ「読み込み7,000MB/s」なのに体感が違う
SSDの商品ページに並ぶ数字はシーケンシャル(連続)読み書きの速度です。この数字が同じでも、Windowsの起動やアプリの立ち上がりで差を感じることがあります。理由のひとつが DRAMを積んでいるかどうか です。
SSDは「どの論理アドレスが、NANDのどの物理ブロックにあるか」の対応表を持っています。これを L2Pテーブル(Logical to Physical)と呼びます。読み書きのたびにこの表を引くので、表をどこに置くかが速度に直結します。
- DRAM搭載SSD … SSDの基板上のDRAMに表を置く
- DRAMレスSSD … 基板にDRAMが無い。表の一部をコントローラ内のわずかなSRAMに置き、残りはNANDから読む
NANDから表を読むのは遅いので、DRAMレスは不利になります。この不利を埋めるための仕組みが HMB です。
HMB(Host Memory Buffer)の仕様
HMBは NVMe 1.2 で規定された機能 で、SSDがホストPCのメインメモリを一部借りて自分の作業領域にできます。借りた領域にL2Pテーブルをキャッシュすることで、NANDまで表を読みに行く回数を減らせます。
押さえておく点は3つです。
1. HMBは部品ではなく、NVMeプロトコルの機能である。 コントローラ・ファームウェア・ホスト側(OSとドライバ)の3つが対応していて初めて働きます。
2. 借りる量は数十MB程度。SSDが要求し、ホストが許す範囲で割り当てられます。PCのメモリが大きく減るわけではありません。
3. ホストのメモリなので、SSD側からは常に確実には使えない。 電源やスリープの状態によって使えない場面があります。
DRAM搭載との差が出る場面・出ない場面
| DRAM搭載 | DRAMレス+HMB | |
|---|---|---|
| 連続読み書き | 速い | ほぼ同等 |
| 小さいファイルのランダムアクセス | 速い | 落ちやすい |
| 大量のファイルを同時に扱う | 安定 | 落ち込みが出やすい |
| 価格 | 高い | 安い |
| 基板の実装面積・消費電力 | 大きい | 小さい |
差が出にくいのは大きなファイルを順番に読み書きする用途です。動画ファイルの移動、ゲームのロード、バックアップのコピーは連続アクセスが主なので、HMB対応のDRAMレスでも数字どおりに近い速度が出ます。
差が出やすいのは小さなファイルにランダムに触る用途です。OSの起動、多数のファイルを開く作業、仮想マシン、データベースのような使い方は、L2Pテーブルを引く回数が多いのでDRAMの有無が効いてきます。在宅ワークで言えば、OSとアプリを入れるシステム用ドライブほどDRAM搭載が効き、データ置き場ならDRAMレスで足りるという切り分けになります。
メリット・デメリット
メリット
- 同容量で安い: DRAMチップを省けるぶん価格が下がる。容量を1段上げる予算に回せる
- 連続速度は落ちない: 商品ページの読み書き数値どおりに近い速度が出る
- 消費電力と発熱が小さい: 部品が少ないぶん有利。薄型ノートや外付けケースで効く
- 基板が小さくできる: 片面実装のM.2に収めやすく、薄いノートPCの増設で選択肢が広がる
デメリット
- ランダム性能はDRAM搭載に届かない: OSが常に出すような細かいアクセスで差が出る
- ホスト側の対応が要る: OSとドライバがHMBに対応していないと、ただのDRAMレスとして動く
- 外付けケースでは効きにくい: USB変換を経由する接続ではHMBが使えない構成がある。外付け用途では利点が消える場合がある
- 表記からは判別しにくい: 「DRAMレス」「HMB対応」を書かない商品ページも多い
買う前に見る3点
1. 用途を先に決める。 システム用(OSを入れる)ならDRAM搭載を優先する。データ置き場・ゲーム置き場ならDRAMレスで足りる
2. 外付けケースに入れるなら期待しない。 USB接続ではHMBが働かない構成があるため、DRAMレスの不利がそのまま出ることを見込んでおく
3. 仕様表に「DRAM」「HMB」の記載があるか探す。 書かれていない場合、コントローラの型番で調べるほうが早い。連続読み書きのMB/s値からは判断できない
容量が同じでも、DRAM搭載とDRAMレスで価格が変わります。価格は変動するため、購入時点のAmazonの表示で確認してください。
まとめ
HMBは「DRAMの代わり」ではなく「DRAMが無いことの埋め合わせ」です。連続読み書きはほぼ埋まりますが、ランダムアクセスは埋まりきりません。OSを入れるドライブはDRAM搭載、データ置き場はDRAMレスという分け方が、価格と体感のつり合いを取りやすい選び方です。
出典
- HMB の仕様(NVMe 1.2 で規定)および DRAMレスSSDでの利用と性能への影響に関する各解説(Innodisk、Phison、PCWorld、PLOS ONE 掲載の検証論文)確認日 2026-09-23