HDMI分配器とは?
HDMI分配器(HDMIスプリッター)は、1つのHDMI入力を受けて、同じ映像を2台以上の表示機器へ同時に出す機器です。1入力2出力が最も一般的で、1入力4出力の製品もあります。
名前が似ている「HDMI切替器(セレクタ)」とは向きが逆です。切替器は複数の入力を1台のモニターで使い分けるための機器で、PCとゲーム機を1枚のモニターに集約したいときに使います。分配器はその逆で、1台のPCの画面を会議室のモニターとプロジェクターの両方に映す、配信用のキャプチャ機器とモニターの両方へ同じ映像を流す、といった用途に使います。
ここで最初に押さえておくべき点が1つあります。
分配器で増えるのは「同じ画面」であって、デスクトップの作業領域ではありません。 2台に出るのはミラーリング(複製)された同一の映像です。左右のモニターに別々のウィンドウを置く拡張表示をしたい場合、分配器では実現できません。それはPC側が2系統の映像出力を持っているか、USB-Cドックや DisplayPort の MST ハブのように複数の独立した映像ストリームを作れる機器の仕事です。この取り違えは分配器を買ってから気づくことが多いので、目的が「作業領域を広げたい」なら分配器は選択肢から外れます。
メリット・デメリット
メリット
- 1台のPCやゲーム機の映像を、2台の表示機器へ同時に出せる。片方をプロジェクター、片方を手元モニターにするような使い方ができる
- PC側の設定変更が要らない。PCからは表示機器が1台つながっているようにしか見えないため、OSの表示設定をいじらずに済む
- 配信・録画の構成で、キャプチャ機器へ映像を渡しつつ手元のモニターでも遅延なく確認できる
デメリット
- 拡張表示(デュアルディスプレイ)はできない。 出るのは同じ映像の複製だけ
- 2台の表示能力がそろっていないと、低いほうに引きずられることがある。 4Kモニターと1080pモニターをつなぐと、両方が1080pで表示される挙動になりうる(これは EDID という表示機器の仕様情報を分配器がどう扱うかで決まる)
- HDCP(著作権保護)に対応していない分配器では、動画配信サービスの映像が映らないことがある
- 給電が必要な機器なので、モニター裏やデスク下にもう1本ケーブルと電源が増える
選ぶときに見る3点
1. 4K60Hzか4K30Hzかは、HDMI規格の世代で決まる
最も価格差と体感差が出るのがここです。「4K対応」と書かれていても、4K30Hz止まりの製品と4K60Hzまで通る製品があるからです。
分かれ目はHDMI規格の世代です。HDMI 1.4 世代の製品はデータレートが10.2Gbpsのため、3840×2160の解像度では30Hzが上限になります。文書やスライドを映すだけなら実用上の問題は小さいのですが、マウスカーソルの動きははっきりカクつきます。デスクの常用環境として使うなら、4096×2160@60Hz(4:4:4)まで対応をうたう世代を選んだほうが後悔しません。
あわせてHDRの扱いも確認してください。4K60Hzに対応していてもHDRは非対応、と明記されている製品があります。
2. 給電方式(USBバスパワーかACアダプターか)
分配器は入力された信号を増幅して2系統に分けるため、必ず電源が要ります。方式は2つです。
- USB給電: 付属のUSBケーブルでPCやUSB充電器から取る。ケーブル1本で済み、設置は軽い
- ACアダプター: 専用の5V2A程度のアダプターが付属する。コンセントを1口占有するが、供給は安定する
4K60Hz対応の製品はACアダプター式が多く、4K30Hzクラスの製品にUSB給電式が多い、という分布になっています。設置場所にコンセントの空きがあるかどうかは、買う前に見ておくとよい点です。
3. 出力先の解像度がそろわないときの挙動(動作モード)
前述のEDIDの話です。分配器は2台の表示機器の仕様を読み取り、どちらにも表示できる共通の設定を選んでPC側に伝えます。この結果、性能の低いほうに合わせられます。
これを製品側で制御できるものがあります。ラトックシステムのRS-HDSP2M-4Kは動作モードを3つ持ち、両方の共通仕様に合わせるモードA(自動判別)、OUTPUT1につないだ機器の仕様に合わせるモードB(優先出力)、電源投入時に共通仕様を決めて固定するモードC(固定出力)を切り替えられます。メインのモニターだけは4K60Hzで使い、サブは1080pでよいという構成なら、この切り替えの有無が実際の使い勝手を左右します。
一方、サンワサプライの400-VGA013とエレコムのVSP-HD4K120BKには、この動作モード切替に相当する機能は仕様に記載がありません。
実在モデルの比較(確認日 2026-08-27)
| 製品名 | 最大解像度 | 給電 | こんな人向け |
|---|---|---|---|
| エレコム VSP-HD4K120BK | 4K/30Hz(HDMI1.4) | USB給電(専用ケーブル付属) | コンセントを増やさず、資料表示中心で使う人 |
| サンワサプライ 400-VGA013 | 4096×2160@60Hz(4:4:4) | ACアダプター DC5V/2A | 4K60Hzを最短で確保したい人 |
| ラトックシステム RS-HDSP2M-4K | 4096×2160@60Hz、1920×1080p@120Hz | ACアダプター DC5V/2A | 2台の解像度が違う環境で挙動を制御したい人 |
1. エレコム VSP-HD4K120BK
1入力2出力の分配器です。HDMI規格はHDMI1.4で、最大表示解像度は4K/30Hz(3840×2160)。HDCPは1.4対応です。
この製品の特徴は給電方式にあります。付属するのはUSB Type-C - USB-A の専用給電ケーブル(約1.1m)で、ACアダプターを使いません。本体は幅約56×奥行65×高さ16mm、重量約96gと、上位2機種よりかなり小さくまとまります。モニター裏に両面テープで留めるような設置がしやすいサイズです。
向いているのは、会議で資料を2画面に出す、サイネージ的に同じ画面を流す、といった動きの少ない映像の用途です。逆に、4K解像度でカーソルを動かす日常作業に挟むには30Hzは厳しい。そこは価格と割り切りの問題になります。
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2. サンワサプライ 400-VGA013
サンワダイレクトの1入力2出力モデルです。最大解像度は4096×2160@60Hz(4:4:4)で、HDCP 2.2に対応します。給電はACアダプター(DC5V/2A)。本体はW116×D54×H19mm、164gです。
注意点を2つ挙げます。1つはHDR非対応が商品名の中に明記されていること。HDR映像を扱う構成に入れる想定なら、この製品は外れます。もう1つはメーカー保証が購入から6か月である点で、後述のラトックの1年保証と比べると短い。
とはいえ、4K60Hz・4:4:4・HDCP2.2という「いま必要な線」は一通り満たしています。用途がPC画面の複製に限られていて、HDRも動作モード切替も要らないのであれば、素直な選択肢です。
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3. ラトックシステム RS-HDSP2M-4K
1入力2出力で、4096×2160(60Hz / 4:4:4 / 24bit)に加えて1920×1080p の120Hzにも対応します。HDCPは1.4/2.2準拠。給電はスクリューロック式のACアダプター(5V2A)で、抜け落ちにくい形状です。本体は約125×60×21mm、約185gと3機種で最も大きく、保証は1年です。
このモデルの価値は前述の動作モードA/B/Cにあります。つないだ2台のスペックが違うときに、どちらに合わせるかを機器側で決められる。片方を4K60Hzのメインモニター、片方を会議用のプロジェクターにするような非対称な構成では、この切り替えがそのまま使い勝手になります。
1080p120Hzを通せる点も、リフレッシュレートを落としたくないゲーム用途の分岐では効いてきます。3機種の中では最も大きく重いので、設置場所だけは先に決めておいてください。
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まとめ
HDMI分配器を選ぶ前に確かめるべきなのは、やりたいことが「同じ画面を2つ」なのか「作業領域を広げたい」なのかです。後者なら分配器では解決しません。USB-Cドックやグラフィックス側の出力を見に行くことになります。
「同じ画面を2つ」で合っているなら、次は解像度とリフレッシュレートです。資料を映すだけならエレコム VSP-HD4K120BK のようなHDMI1.4・4K30HzのUSB給電モデルで設置が最も軽く済みます。日常作業を通すなら4K60Hz対応が要るので、サンワサプライ 400-VGA013 かラトックシステム RS-HDSP2M-4K が候補になります。
その2つの分かれ目が、つなぐ2台のスペックがそろっているかどうかです。そろっているなら400-VGA013で十分。片方だけ4K、片方は1080pのプロジェクター、という非対称な組み合わせなら、動作モードを切り替えられるRS-HDSP2M-4Kのほうが後で困りません。HDRを通す必要があるかどうかも、この段階で確認しておいてください。
なお仕様は各メーカーの公表値(2026年8月27日確認)に基づいています。価格は変動するため本文では触れていません。購入前にAmazonの商品ページと各メーカーの製品ページで最新の仕様をご確認ください。