ケーブル1本にまとめたのに、映像が出ない
ノートPCとドックをUSB-Cケーブル1本でつなぎ、そこからモニター2枚と有線LANとSSDを生やす。この構成でよく起きるのが「2枚目のモニターが映らない」「映るが60Hzにならない」「外付けSSDの転送が急に遅くなる」という症状です。
原因はたいていドックの故障ではなく、帯域の取り合いです。USB4もThunderboltも、映像・データ・電源のうち電源以外は1本のリンクを分け合います。モニターに割り当てた分だけ、SSDやLANに残る分が減ります。
この記事では、規格が公表している数字だけを使って「自分の構成が1本で足りるのか」を見積もる方法をまとめます。
まず自分のポートが何Gbpsかを確定させる
USB4は2019年8月29日に公開された規格で、速度の呼称は転送レートそのものになっています。
| 呼称 | 速度 | 備考 |
|---|---|---|
| USB 20Gbps | 20 Gbit/s | USB4 Version 1.0 の下限 |
| USB 40Gbps | 40 Gbit/s | USB4 Version 1.0 の上限 |
| USB 80Gbps | 80 Gbit/s | USB4 Version 2.0(2022年10月18日公開) |
Thunderbolt側は次のようになります。Thunderbolt 4は2020年、双方向40Gbpsで、4Kディスプレイ2枚(DisplayPort 1.4)が必須要件です。Thunderbolt 5は2023年で、双方向80Gbps、8K60Hzのディスプレイ2枚が必須要件、最新のUSB4 Version 2.0に対応します。
「USB-Cポートがある」ことは、USB4であることを意味しません。 見た目が同じでも、USB 3.2 Gen 2(10Gbps)止まりのポートは珍しくありません。PCの仕様表で「USB4」「Thunderbolt 4」「Thunderbolt 5」のいずれかが明記されているかをまず確認してください。
映像がどれだけ食うかを概算する
DisplayPortの映像は非圧縮だと、おおまかに「横×縦×色深度×リフレッシュレート」に比例した帯域を必要とします。4K(3840×2160)60Hzの非圧縮映像が10Gbps弱、これが2枚で20Gbps弱という規模感です。40Gbpsのリンクなら、この時点で残りは半分程度になります。
ここで効くのがDSC(Display Stream Compression)です。DSC対応のモニターとPCの組み合わせなら映像を圧縮して送れるため、同じ帯域でより高い解像度・リフレッシュレートが通ります。モニター側がDSCに対応していないと、この節約は効きません。 2枚目が映らないときは、モニターの仕様表でDSCの記載を確認する価値があります。
Thunderbolt 5の非対称モード
Thunderbolt 5には「Bandwidth Boost」と呼ばれる非対称モードがあります。片方向を120Gbit/s、逆方向を40Gbit/sに割り振る動作で、映像のように一方向へ大量に流す用途に合わせた仕組みです。
つまりThunderbolt 5の80Gbpsは「常に上下40Gbpsずつ」ではなく、用途に応じて配分が変わるということです。高解像度モニターを複数つなぐ構成では、この配分の切り替えが効きます。
メリット・デメリット
メリット
- ケーブル1本で電源・映像・データがまとまる: 出社と在宅を行き来する人ほど、抜き差しの回数が減る効果は大きい
- Thunderbolt 5は240Wまでの給電に対応: ノートPCの充電も同じ1本で賄える構成が組みやすい
- 既存のパッシブケーブル(1mまで)がそのまま使える: Thunderbolt 5は1mまでのパッシブケーブルで動作するとされており、買い足しが最小限で済む
デメリット
- 帯域は必ず取り合いになる: モニターを増やせばSSDやLANに残る分が減る。これは製品の善し悪しではなく規格の構造
- ポートの世代がPC側で決まる: ドックだけThunderbolt 5にしても、PC側がUSB4 40Gbpsなら40Gbpsで頭打ちになる
- DSC対応はモニター次第: PCとドックが対応していても、モニターが対応していなければ圧縮は効かない
- 仕様表の読み解きが必要: 「USB-C対応」としか書いていない製品からは、必要な情報が読み取れない
おすすめ製品の比較
1. USB4 ドッキングステーション
USB4(40Gbps)対応のドックは、4K1枚と有線LAN・USB周辺機器という構成なら余裕があります。4K2枚を60Hzで出したい場合は、DSC対応かどうかで結果が変わります。購入前に、製品ページで「対応する最大ディスプレイ構成」が明記されているかを確認してください。明記していない製品は、この一番大事な条件を保証していないと考えたほうが安全です。
2. Thunderbolt 5 ドック
Thunderbolt 5は双方向80Gbps、非対称モードで最大120Gbps、8K60Hz2枚が必須要件です。高解像度モニターを複数使う、あるいは映像を出しながら外付けSSDへ大きなファイルを書き続けるといった、帯域を同時に食う使い方をする人には差が出ます。逆に、4K1枚と資料作業が中心なら、USB4 40Gbpsのドックとの体感差はほとんど出ません。
買う前に確認する4点
1. PC側のポートが USB4 / Thunderbolt 4 / Thunderbolt 5 のどれかを仕様表で確定させる
2. つなぐモニターの解像度とリフレッシュレートを書き出す(4K60Hzか、WQHD144Hzかで必要量が変わる)
3. モニターがDSCに対応しているかを確認する
4. ドックの製品ページに「対応する最大ディスプレイ構成」が書かれているかを見る
まとめ
1本にまとめられるかどうかは、ドックの値段ではなくPCのポートの世代と、つなぐモニターの合計負荷で決まります。4K1枚なら40Gbpsで十分に足ります。4K2枚を60Hzで確実に出したい、あるいは映像と大容量転送を同時にやるなら、Thunderbolt 5側の余裕が効いてきます。
なお、ここに挙げた速度・必須要件はいずれも規格が定める値です。実際に何枚映るかは製品ごとの実装で変わるため、価格とあわせて最新の製品ページで確認してください。価格は変動します。