同じ「65W対応」でも充電速度が違う

USB PD対応の充電器を買い替えたのに、スマホの充電時間がほとんど変わらない。ワット数は足りているのに速くならない、という状況には理由があります。

USB PD の基本は、5V・9V・15V・20V といった決まった電圧に切り替える仕組みです。機器が必要としている電圧がその間にある場合、機器の内部で余分な電圧を熱に変えて落とすことになります。これが発熱になり、発熱を抑えるために充電速度が制限されます。

この無駄をなくすのが PPS(Programmable Power Supply) です。

PPS の仕様

PPS では、充電器が出す電圧を 20mV刻み、電流を 50mA刻み で調整できます。電圧の範囲は 5V〜21V、電流の上限は5A、電力は100Wまでです(USB PD の Standard Power Range の枠内)。

刻みが細かいことの意味は単純で、機器が欲しい電圧をほぼそのまま出せるということです。落として捨てる電圧が減るので発熱が減り、発熱で速度を絞る必要も減ります。バッテリーの充電は残量によって最適な電圧が変わっていくので、その変化に追随できる点も効きます。

AVS との違い

100Wを超える EPR(Extended Power Range) の領域には AVS(Adjustable Voltage Supply) という別の仕組みがあります。役割は似ていますが、次の点が違います。

PPSAVS
電圧の刻み20mV100mV
電圧の範囲5V〜21V15V〜48V
電流制限の動作ありなし
位置づけSPR(100Wまで)EPR(100W超)

PPS はスマホ・タブレットのような「細かく詰めたい」用途、AVS は高出力ノートPCのような「広い電圧範囲を扱いたい」用途、という住み分けです。刻みが20mVと100mVで5倍違うのは、この用途の差から来ています。

なお EPR を使うには 240W 対応(EPR)のケーブルが要ります。手持ちの100Wケーブルでは EPR の電圧まで上がりません。

効くかどうかは受け側で決まる

PPS は充電器と機器の両方が対応していないと働きません。 片方だけでは通常のUSB PDとして動くだけです。

  • 充電器側 … 商品ページの出力表記に「PPS」または「3.3V-11V/5A」のような範囲表記があるか

  • 機器側 … スマートフォンのメーカーが PPS 対応を明記しているか

固定電圧だけが並んでいる表記(5V/3A、9V/3A、20V/3.25A など)に PPS の行が無ければ、その充電器は PPS を出しません。総出力のW数からは判断できません。

メリット・デメリット

メリット

  • 発熱が減る: 落として捨てる電圧が減るので、機器側の損失が小さい

  • 発熱が減るぶん速度を維持しやすい: 熱による速度制限に入りにくい

  • 残量に応じて追随できる: 充電の進み方に合わせて電圧が変わる

  • 既存のUSB PD機器とも互換: 非対応機器につないでも通常のPDとして動く

デメリット

  • 両方の対応が必要: 充電器だけ、機器だけでは効かない

  • 対応の有無が表記からしか分からない: 見た目では区別できない

  • すべての機器が恩恵を受けるわけではない: ノートPCなど20V付近を素直に使う機器では差が出にくい

  • 100Wまで: それ以上は AVS の領域になる

買う前に見る3点

1. 充電器の出力表記に範囲があるか: 「3.3V-11V/5A」のような範囲表記か「PPS」の語があるか。固定電圧の列挙だけなら非対応
2. 手持ちのスマホが対応しているか先に調べる: 対応機種でなければ、PPS対応の充電器を買っても通常のPD充電になる
3. ノートPC用途なら優先度は低い: 20V付近を使う機器では差が出にくい。必要なW数とポート数を優先する

複数ポートの充電器では、PPS が使えるポートが限られている製品があります。仕様表でポートごとの出力を確認してください。

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出典

  • USB PD の PPS / AVS に関する各解説(Diodes Incorporated、GraniteRiverLabs、Renesas)確認日 2026-09-12