SGマークは机と椅子のどこに付くか
在宅用の椅子を通販で探していると、商品説明に安全らしき単語がいくつも並ぶ。「SGマーク」「SGS認証済みガスシリンダー」「BIFMA基準」。どれも安心材料のように見えるが、中身はまったく別の話である。
まず SGマークから。一般財団法人 製品安全協会が運営している制度で、製品の品目ごとに SG基準が決められている。協会が公開している家具・家庭用品の一覧を見ると、そこに載っているのは次のような品目である。
- 0015 住宅用金属製脚立
- 0016 二段ベッド及びロフトベッド
- 0037 住宅用金属製はしご
- 0053 食器棚
- 0062 育児用たんす
- 0063 座いす
- 0102 圧着式簡易棚及び棒
- 0139 家庭用アイロン台
- 0159 踏み台兼用いす
ここに「事務用チェア」も「昇降デスク」も無い。 つまり在宅ワーク用のオフィスチェアやデスクを探して「SGマーク付き」を条件に絞ると、見つからないのが正常である。無いことを不審に思う必要はない、というのがこの記事の一番の要点になる。
SGマークが付いているとき、何が保証されるのか
SGマークの実質的な中身は、基準適合そのものよりも賠償制度にある。製品安全協会の説明によれば、SGマーク付き製品の欠陥が原因で事故が起き、人身に損害が出たときに賠償される。条件は次のとおりである。
- 賠償の上限は1事故あたり1億円で、その範囲内で1人あたり最大1億円
- 対象は人身損害のみ。協会は「物的な損害は賠償の対象となりません」と明記している
- 日本国内で発生した事故に限る(「日本国内で発生した事故に限ります」)
- 原則としてSGマークの表示有効期限内に起きた事故が対象(「原則として、SGマークの有効期限内の事故が対象となります」)
物損が対象外というのは、実用上けっこう効く。椅子が壊れて床が傷んだ、デスクが倒れてモニターが割れた——こうした被害はこの制度では戻ってこない。賠償されるのは、あくまで人がけがをしたときである。
メリット・デメリット
メリット
- 品目一覧を見れば、その種類にSG基準があるかどうかが分かる。無い品目を探し続ける時間を節約できる
- 賠償の上限と範囲が公開されている。1事故1億円・人身のみ・国内・有効期限内という線が明確である
- 有効期限という概念があるため、いつまでの事故が対象かを自分で確認できる
- 踏み台兼用いすや脚立には基準がある。デスク下の足置きや高所の棚に手を伸ばす用途で買うなら、ここは選択の材料になる
デメリット
- 事務用チェアと昇降デスクは制度の外にある。在宅ワークの主役である2品目に、この安全表示は使えない
- 物損は賠償されない。家財への被害を心配して選ぶ基準にはならない
- 「SGS認証」とは別物である。SGSは民間の検査・認証機関の名称で、製品安全協会のSGマーク制度とは関係がない。名前が似ているだけなので、商品説明の「SGS認証済みガスシリンダー」をSGマークと読み替えないこと
- 表示有効期限を過ぎた製品は賠償の対象外になる。長く使う家具ほど、この点は効いてくる
- 基準適合は耐久性の保証ではない。何年使えるか、座り心地がどうかは別の話である
SGマークの対象になっている品目を選ぶなら
注意: 以下は2026年9月20日に製品安全協会の公開情報で確認した品目区分である。個別製品がSGマークを取得しているかは商品ページと実物の表示で確認してほしい。価格は変動する。
| SG基準の番号 | 品目 | 在宅ワークでの使いどころ |
|---|---|---|
| 0159 | 踏み台兼用いす | 座面としても踏み台としても使う。デスク下の足置きや、棚の上段を取るとき |
| 0063 | 座いす | 床座りで作業する環境。ローデスクと組み合わせる場合 |
1. 踏み台兼用いす
製品安全協会の家具・家庭用品の一覧に 0159 踏み台兼用いすとして基準がある品目である。座るためだけでなく上に立つことを前提に基準が作られているので、体重をかけて棚の上段を取るといった使い方を想定できる。
在宅ワークでは、足が床に届かないときの足置きとして使われることがある。ただし椅子の高さを上げた状態で使う足置きは、足を乗せたまま体重が前に移ると滑りやすい。踏み台として立つことと、足置きとして常時乗せることは別の荷重のかかり方なので、製品の表示にある使用方法を見て判断してほしい。
デメリットは、オフィスチェアの代わりにはならないこと。背もたれや座面のクッション性は前提に入っていないので、1日座る用途には向かない。
2. 座いす
0063 座いすとして基準がある品目である。床に座って作業する環境で、ローテーブルやこたつと組み合わせて使う。
在宅ワークでの位置づけは、デスクと椅子を置く場所が取れない部屋の選択肢になる。SG基準がある品目なので、賠償制度の対象になり得るという点では、事務用チェアより確認できる情報が多い。
デメリットは、姿勢の面ではデスクと椅子に劣ること。床座りは骨盤が後ろに倒れやすく、長時間のPC作業では腰への負担が読みにくい。またモニターの高さを目線に合わせにくいため、ノートPCを床置きで長時間使う形になりやすい。
まとめ
オフィスチェアや昇降デスクを選ぶときに、SGマークを条件にしても意味がない。制度の品目にそもそも入っていないからである。代わりに見るのは、メーカーが公開している耐荷重、ガスシリンダーの試験、保証年数といった個別の情報になる。
そして、商品説明の「SGS」は製品安全協会のSGマークではない。名前の近さで読み替えないことが、この分野で一番よく起きる誤解を避ける方法である。価格は変動するため、購入前にAmazonの商品ページで最新の情報を確認してほしい。