「モニター1枚で会社PCと私物PCを同時に見たい」から始まる話
在宅勤務の机に、会社支給のノートPCと私物のデスクトップが並んでいる。モニターは1枚しかない。入力を切り替えれば両方映るが、切り替えるたびに片方が見えなくなる。会社PCでビデオ会議をしながら私物PCの画面を見たい、という場面で困る。
このときに出てくるのが PbP と PiP である。どちらも「複数の入力信号を1台のモニターに同時に表示する」機能で、名前が似ているため混同されやすい。
アイ・オー・データはこの2つを次のように説明している。PiP(ピクチャー イン ピクチャー)は「親画面内に子画面を表示」、PbP(ピクチャー バイ ピクチャー)は「親画面と子画面を並べて表示」である。PiPは重ねる、PbPは並べる、と覚えれば取り違えない。
そしてもう1つ、同じ説明の中に見落とされやすい制限が書かれている。「入力できる端子は2系統までです」という一文である。3台のPCを同時に映すための機能ではない。
メリット・デメリット
メリット
- 切り替え操作が要らなくなる。会社PCの会議画面を見ながら私物PCの作業画面を見る、といった使い方ができる
- モニターが1枚で済む。机の幅もモニターアームも増やさずに、2系統を同時に扱える
- PiPなら子画面が小さいので、主作業の面積をほとんど削らない。監視用途(ログ、チャット、配信)に向く
- PbPなら左右が対等なので、両方を同じ重さで見る作業に向く
- 機種によってはPBPモードでUSBのキーボードとマウスを切り替えられる(いわゆるKVM)。物理的な切替器を買わずに済む場合がある
デメリット
- 入力は2系統まで。3台以上を同時に映す用途には使えない。アイ・オー・データのFAQが明記している
- PbPは表示に使える解像度が半分になる。デルは21対9のモデルでの例として、左右それぞれのネイティブ解像度が1720×1440になると説明している。27型4K(3840×2160)を左右に割れば、片側は横1920相当になる
- 文字が小さくなる。分割後の片側を100%表示で使うと、実質的に「小さいモニター2枚」と同じ見え方になる
- 入力の組み合わせに制約がある。ASUSは「DVIとHDMIを同時に選択しないでください」と注記しており、同時に表示できる入力ソースは機種ごとの表で決まっている
- 音声は片方しか出ないのが普通である。どちらの音を出すかはメニューで選ぶ形になる
- 設定がOSD(モニター本体のメニュー)にある。PCから切り替えられないと、使うたびに本体のボタンを押すことになる
買う前に決めておくべき一点
分割後の片側で、実際に何を表示するのかを先に決めてほしい。ここが曖昧なまま「2画面同時表示できるモニター」を買うと、使わない機能に金を払うことになる。
判断の基準は単純である。片側に置くのが「読むもの」なら PbP、「見張るもの」なら PiP でよい。
- コードとドキュメントを並べる、2つの表を突き合わせる、といったどちらも読む用途はPbPが向く。ただし片側の横解像度が半分になる前提で、画面サイズと解像度を選ぶ必要がある
- チャット、ログ、監視カメラ、会議の顔映像のように、視線を時々やるだけのものはPiPで足りる。主作業の面積を削らずに済む
この判断を先にしておくと、必要なモニターの大きさも決まる。PbPを常用するつもりなら、27型4Kが実質的な下限になる。フルHD(1920×1080)を左右に割ると片側が960×1080になり、ブラウザを開くだけで横が足りなくなる。
おすすめ製品の比較
注意: 以下は2026年9月19日に各メーカーの公式製品ページおよび公式サポート情報で確認した内容である。価格は変動するため、購入前に商品ページで最新の情報を確認してほしい。
| 製品名 | メーカー | 画面 | PbP/PiP の内容 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| LCD-M4K271XDB | アイ・オー・データ | 27型ワイド/3840×2160/ADS非光沢 | PbPで左右半分ずつ2画面、PiPで最大2画面同時表示 | HDMI3系統+DisplayPort+アナログRGB/スピーカー2W+2W |
| PD2700U | BenQ | 27型/3840×2160 | PIP/PBP 対応 | 2台のPCを扱うKVMスイッチ/USBハブ/スピーカー内蔵 |
1. アイ・オー・データ LCD-M4K271XDB
27型ワイドの4Kモニターで、パネルはADS方式の非光沢、解像度は3840×2160である。公式ページには PbP機能で左右半分ずつの2画面表示、PiP機能で最大2画面の同時表示に対応すると記載されている。この記事で扱っている2つの機能を両方持っている機種である。
入力端子はHDMIが3系統(HDMI1は4K 60Hz・HDCP 2.2)、DisplayPort、アナログRGB、USBである。入力が多いことと、同時に表示できる数は別の話である点には注意がいる。アイ・オー・データのFAQが書いているとおり、親子画面で使えるのは2系統までなので、HDMIが3つあっても3画面にはならない。端子が多いことの利点は、つなぎ替えずに「どの2つを組み合わせるか」を選べることにある。
スピーカーは2W+2Wのステレオ内蔵である。VESAは100mmピッチで、モニターアームに載せ替えられる。本体サイズはスタンドありで632×235×445mm、質量は5.7kgである。スタンドの調整は上20度・下5度のチルトのみで、高さ調整とピボットは持たない。机の上で高さを合わせたい場合は、VESA対応のアームを別に用意する前提になる。
USBの給電は最大3.0Aと記載されている。ワット数の明記はないため、ノートPCをこのモニターから充電する用途には向かない。映像入力と給電を1本のUSB-Cでまとめたい人が選ぶ機種ではない。
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2. BenQ PD2700U
27型・3840×2160の4Kモニターで、公式ページでは制作者向けのAQCOLOR Creative Proシリーズとして案内されている。PIP/PBPに対応し、あわせて2台のPCを扱うKVMスイッチを持つ。USBハブとスピーカーも内蔵する。
この機種の特徴は、PbPで2台を並べたときに、キーボードとマウスも一緒に切り替えられる点にある。PbPは映像を並べるだけなので、通常は入力機器を2組置くか、別途KVM切替器を買うことになる。それが本体の機能として入っている。2台のPCを日常的に行き来する使い方では、机の上に置く物が減る。
色に関する記載は、sRGBとRec.709をそれぞれ100%カバーし、Delta E は3以下、工場で個別にキャリブレーションされている、というものである。HDR10に対応し、CalMANとPANTONEの認証を受けている。表示モードとしてDualView、CAD/CAM、デザイン、ダークルームが用意されている。目に関する機能としてフリッカーフリーとブルーライト低減があり、TÜV Rheinlandの認証を受けている。
スタンドは高さ調整、ピボット、チルト、スイベルに対応し、VESAにも対応する。アイ・オー・データの機種と違い、スタンド単体で高さと縦回転を扱える。
一方で、公式ページの本文からは入力端子の種類と数、スピーカーの出力W数、本体寸法と質量、輝度やコントラスト比といった数値を確認できなかった。PbPで何と何を組み合わせられるかは端子構成に依存するので、購入前に仕様表で端子を確認してほしい。
設定でつまずきやすい点
機能があっても、設定で止まることがある。公式情報から読み取れる注意点は次の3つである。
1. 同時に選べない入力の組み合わせがある。ASUSは自社のFAQで「DVIとHDMIを同時に選択しないでください」と注記し、同時に表示できる入力ソースを表で示している。組み合わせは機種ごとに違うので、手持ちのPCの出力端子と突き合わせて確認する
2. 子画面のサイズと位置はPiPだけの設定である。ASUSの説明では、サイズは小・中・大から、位置は右上・左上・右下・左下から選ぶ。PbPには子画面という概念が無いので、これらの設定は出てこない
3. PbPの見え方には2通りある。デルは自社の説明で、画面に合わせて両方の画像を垂直に引き伸ばす設定と、アスペクト比を維持する設定を挙げている。引き伸ばすと映像が縦長に歪み、維持すると上下に黒帯が出る。どちらかを選ぶことになるので、歪みが許せない用途では黒帯を受け入れる
もう1つ、PBPモードとKVMの関係も確認したい。KVMを持つ機種でも、KVMの切り替えがPBPモード中に限られる場合がある。1画面表示のときは入力切替でしか動かない、という作りである。2台を行き来する頻度が高いなら、この条件を仕様で読んでおきたい。
選び方のポイント
1. 入力は2系統までと理解しておく。3台以上のPCを同時に映す用途には、この機能は使えない
2. PbPを常用するなら27型4K以上を選ぶ。分割後の片側が実用的な広さになるかどうかで決まる。フルHDを割ると片側960×1080になる
3. PiPで足りる用途かを先に判断する。片側が監視用なら、面積を削らないPiPのほうが主作業は快適である
4. KVMの有無を見る。2台を頻繁に行き来するなら、キーボードとマウスも切り替わるほうが机の上が片付く
5. スタンドの調整範囲を確認する。PbPで2画面を長時間見るなら、高さが合っていないと首に来る。チルトだけの機種はモニターアーム前提で考える
6. 端子の数と、同時表示できる数を混同しない。HDMIが3つあっても、親子画面で使えるのは2系統である
読者タイプ別には、PbPとPiPの両方を明記していて価格を抑えたいならアイ・オー・データ LCD-M4K271XDB が候補になる。ただしスタンドはチルトのみである。2台のPCをキーボードごと行き来し、色も合わせたいならBenQ PD2700U が候補になる。こちらはスタンドが高さとピボットに対応する。
まとめ
PbPは親画面と子画面を並べ、PiPは親画面の中に子画面を重ねる。重ねるか並べるかの違いである。どちらもアイ・オー・データのFAQにあるとおり、入力は2系統までに限られる。
PbPを選ぶなら、分割後の片側の解像度を先に計算してほしい。デルは21対9のモデルで左右それぞれが1720×1440になると説明しており、分割すると片側は「小さいモニター」になる。27型4Kが実用の下限になるのはこのためである。
2026年9月19日時点の公式情報では、アイ・オー・データ LCD-M4K271XDBが27型ワイド・3840×2160・ADS非光沢・PbPで左右2画面/PiPで最大2画面・HDMI3系統+DisplayPort+アナログRGB・スピーカー2W+2W・VESA100mm・632×235×445mm・5.7kg・チルト上20度/下5度である。BenQ PD2700Uは27型・3840×2160・PIP/PBP対応・2台用KVM・USBハブ・スピーカー内蔵・sRGB/Rec.709 100%カバー・Delta E 3以下・高さ/ピボット/チルト/スイベル対応である。
価格は変動するため、金額はAmazonの商品ページで最新のものを確認してほしい。