「HDR対応」だけでは何も分からない
モニターの商品ページに「HDR対応」と書かれていても、それが何を満たしているのかは分かりません。HDRの信号を受け取れるだけの製品と、実際に明暗を描き分けられる製品が、同じ言葉で売られています。
判断できる形になっているのが、VESAの DisplayHDR 認証です。等級ごとに満たすべき数値が決まっているので、「HDR対応」より一段細かく製品を選べます。
等級ごとの基準
VESAが公開している性能基準は次のとおりです。
| 等級 | ピーク輝度 | 黒レベル | 最低コントラスト | DCI-P3 |
|---|---|---|---|---|
| DisplayHDR 400 | 400 cd/m² | 0.4 cd/m² | 規定なし | 90% |
| DisplayHDR 500 | 500 cd/m² | 0.1 cd/m² | 1,300:1(1Dバックライト) | 90% |
| DisplayHDR 600 | 600 cd/m² | 0.1 cd/m² | 8,000:1(1Dバックライト) | 90% |
| DisplayHDR 1000 | 1000 cd/m² | 0.05 cd/m² | 30,000:1(2Dバックライト) | 95% |
| DisplayHDR 1400 | 1400 cd/m² | 0.02 cd/m² | 50,000:1(2Dバックライト) | 95% |
ピーク輝度は画面中央8%のパッチで測った値、黒レベルは Dual Corner Box テストでの値です。色域はいずれの等級も ITU-R BT.709 を99%、DCI-P3 を90%(1000以上は95%)求めています。ビット深度は全等級で「10-bitの映像信号」と「最低8-bitのデジタル/アナログ変換」です。
400と600の差は「明るさ1.5倍」ではない
表を明るさの列だけで読むと、400と600の差は1.5倍に見えます。実際の差は黒レベルのほうに出ます。
- DisplayHDR 400 … 黒レベル 0.4 cd/m²、コントラストの規定なし
- DisplayHDR 600 … 黒レベル 0.1 cd/m²、最低 8,000:1
黒レベルが4分の1になり、さらに最低コントラストの規定が加わります。HDRで「暗いシーンの中の明かり」が描けるかどうかは、明るい側より暗い側で決まるので、ここが等級の実質的な分かれ目です。DisplayHDR 400 はコントラストの下限が定められていないため、認証を通っていても一般的なSDRモニターと見え方が変わらない製品があり得ます。
True Black は別の系列
有機ELなど自発光パネル向けに DisplayHDR True Black という別系列があります。True Black 400 / 500 / 600 のピーク輝度はそれぞれ 400 / 500 / 600 cd/m² で標準系列と同じですが、黒レベルは 0.0005 cd/m²(チェッカーボードテスト)です。
標準系列の DisplayHDR 400 が 0.4 cd/m² なので、同じ「400」でも黒の基準は800倍違います。 数字だけを見て比較すると取り違えるので、「True Black」が付いているかどうかを先に確かめてください。
メリット・デメリット
メリット
- 数値で比較できる: 「HDR対応」と違い、等級ごとに満たすべき値が公開されている
- 黒レベルが明記されている: 見え方に効く側の基準を確認できる
- 色域とビット深度も含まれる: 明るさだけの指標ではない
デメリット
- DisplayHDR 400 は差が出にくい: コントラストの下限が無く、SDRと見分けが付かない製品があり得る
- 認証は任意: 実力があっても認証を取っていない製品がある(無認証=低性能ではない)
- True Black と数字が重なる: 同じ「400」でも基準が違う
- 等級は上限性能ではない: 認証は最低ラインの保証であり、同じ等級でも実機の差は残る
買う前に見る3点
1. 等級を数字で確認する: 「HDR対応」ではなく「DisplayHDR 600」のように等級で書かれているか
2. True Black の有無: 付いていれば自発光パネル系列で、黒レベルの基準がまったく別
3. 400なら期待値を下げる: コントラスト規定が無いので、HDR目当てなら500以上を検討する
在宅ワークで書類とブラウザが主なら、HDRの等級より解像度・サイズ・作業時の明るさのほうが効きます。動画や写真を扱う人にとって、この表は選択肢を絞る材料になります。
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出典
- VESA DisplayHDR 性能基準(https://displayhdr.org/performance-criteria/)確認日 2026-09-12